読んだ書籍:外国人労働者・移民・難民ってだれのこと?

 

 現在世界中で人が移動している。戦争や貧困を逃れて、そして働く場を求めて。日本でも労働力不足により外国人労働者の受け入れを決定したことにより、今後さらに多くの人が外国から働きに来る。しかし、やってくるのは「労働力」ではなく「人」だ。本書では彼らとどうやってつきあっていけばいいのかをとても分かりやすく解説している。

 昨年4月より施行された特定技能という制度の問題をはじめ、日本が外国人をいかに酷く扱っているのか、本当なら移民であるのに、そうでないようにごまかしている事がよくわかる。せっかく日本がいいなと思って来てくれる人がいるのだから、そういった人々の人権も尊重して共に暮していける国にした方がずっと良いと思う。言語や文化の理解を深め、「労働力」としてではなく「人」として認めることが非常に重要だと思った。

 

文責:政安

 

著者:内藤正典

出版社:集英社

発行年:2019年

読んだ論文:English skills, labour market status and earnings of Turkish women

 

 この論文では2007年の成人教育調査のデータを使用して、トルコの女性の労働市場の成果に対する英語スキルのレベルの影響を調査していた。分析の結果として、英語に堪能であることは賃金労働者として雇用される可能性が高くなることが明らかになった。またその一方で家事に関わる可能性が低い事も明らかになった。

また、新たな分析結果として外国語(この場合は英語)の知識は労働市場への参加と収入能力を刺激するが、トルコの労働市場における女性の職業的地位に実質的に影響を与えることはない事が明らかになった。英語の知識が女性の職業的地位に影響を与えないというのもとても意外に感じる部分だった。

文責:岡

 

著者:Antonio Di Paolo & Aysit Tansel

出版社:University of Barcelona, Research Institute of Applied Economics, revised Jan 2019

発行年:2019年

読んだ論文: 日本の外国人研修制度・技能実習制度と ベトナム人研修生

 

 本稿では、近年在日外国人研修生の中でもトップクラスに入るベトナム人に対してインタビュー調査を行い、日本の技能実習制度の現状や問題点について述べられている。技能実習制度の主な問題点としては実習生を送り出す側のベトナムと、受け入れる側の日本では、技能実習制度の目的が異なっていることが指摘されている。本来の技能実習制度の目的は日本で技術を学び自国へ持ち帰るというものであるが、ベトナムでは失業問題を解決するために学歴の低い人を出稼ぎへ送り出し、日本では労働力不足を解決するために受け入れるというケースが多い。一見それぞれの目的がマッチしているように感じるが、制度の本来の目的とは外れているため、様々な問題が起きている。その中には、送り出し機関のあっせん詐欺や高額な保証金、言語力の欠如などである。このような問題をなくすために、研修生に対する厳密な選考、研修生斡旋業者の管理などの改善が必要であると指摘している。

 

文責:榎谷

 

著者:グェン・ティ・ホアン・サー

出版社:佛教大学大学院紀要 社会学研究科篇 第41

発行年:2013