読んだ論文:“Labour-market assimilation of foreign workers in Italy”

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これはイタリアの外国人(すなわち非市民)労働者の労働市場同化を分析する論文であった。1990年から2003年までの、一致する雇用者 - 従業員パネルデータセットであるWHIPにおける日々の賃金と男性労働者の雇用日数を考慮している。結果として、外国人労働者と自国人労働者の雇用の差は入国時にも見られ、時間の経過とともに増加していることが明らかになった。建設業では賃金と雇用の格差がさらに大きく、製造業とサービス業は総体的な傾向をたどっている。アフリカの移民はキャリアの見込みが最も少なく、東ヨーロッパやアジアの労働者はそれほど遅れていないということが分かっている。外国人労働者の一般的なパターンは、季節や一時的な仕事、あるいは合法的な雇用と違法な雇用に限定された、細分化されたキャリアであり、これは時間とともに増加していることなどがこの論文から分かった。

文責:榎谷

 

論文詳細

著者名:Alessandra Venturini  Claudia Villosio

論文誌名:Oxford Review of Economic Policy, Volume 24, Issue 3, Autumn 2008, Pages 517–541

掲載年:2008年

出版社:Oxford Review of Economic Policy

 


読んだ論文:外国人労働者問題の根源はどこにあるのか

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 この論文ではなぜ労働力として欠くことのできない位置を占めつつも、社会的には外国人労働者を日本が受け入れることができないのかを、日本の法システムにおける外国人の位置づけに着目して論じている。その上でもし日本が今後も外国人労働者を必要とするならば、どのような意味づけを持った人として外国人が定義づけられなければならないかを示している。

 外国人労働者は今後も不安定な就労環境のなかで労働し、生活していかなくてはならない。こうした現実があるにもかかわらず、決して日系人労働者に対する需要は失われない。今後ますます安価で簡単に切れる労働力への需要が増して強くなっていく。また、外国人観光客が増えているのに対し、対応できる外国人労働者も必要となる。日本は外国人労働者を雇用するための体制を整えるべきであると思う。

 

文責:政安

 

論文詳細

著者名:丹野清人

論文誌名:日本労働研究雑誌 51(6),27-35

掲載年:2009年6月

出版社:労働政策研究・研修機構


書籍・資料感想

読んだ書籍:ルポ 差別と貧困の外国人労働者

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この本では、外国人労働者の悲惨な状況について書かれている。

 

日本が海外からの研修生を受け入れるようになったのは1950年代後半だとされている。その頃、日本企業が海外進出を始めたばかりで、進出先の現地の労働者を日本へ招き、必要な知識や技術を習得させることを目的として研修が始まった。その当時の研修はあくまでも人材育成を目的として考えられていた。しかし、人件費削減や単純労働者の確保のために研修制度が重宝されるようになったのである。

 

  外国人労働者の悲惨な状況を示す例として、中国人研修生に取材した内容が書かれていた。2005年に著者が彼女らを取材したとき、彼女らは古い木造建築の小さな寮に6人で住んでいた。「先進技術を学ぶことができる」とブローカーに吹き込まれて日本へ来たという彼女らは、縫製工場で働いていた。しかし、工場には古いミシンが並んでいるだけで「先進技術」などどこにもなく、毎月の基本給は5万円、そのうち35000円は強制的に貯金させられるため、手元に残るのはたったの1万5000円だけだったという。このような状況をもたらしているのは、企業の経営者だけでなく、協同組合(研修生の受け入れ機関)も関与していたのである。協同組合などの機関が研修制度の意味をはっきりさせず、日本企業へ研修生を送り込むことによって、悲惨な状態を招いていたといわれている。

  

また、「デカセギ」についても述べられていた。海外に居住する日系人の「デカセギ」のブームが始まったのは、入管法が改正された1990年だった その入管法改正によって、三世までの日系人が「定住者」としての資格が与えられ、自由に就労するすることが可能となった。その「デカセギ」の多くはブラジル人であり、彼らの多くは工場などの単純労働を担わされていた。しかし、次第に単純労働が必要とされなくなり、いきなりのクビ切りを宣言される人々が多く出てきた。「使い捨て」目的の雇用だったのである。会社を追い出された彼らは、居住する場所もなくなり、彼らの子どもたちが学校にいけないという問題も出てきた。

 

 この本に出てきたセリフとして、「なんでガイジンが日本人と同じ給料を要求するのか。理解に苦しむ」という、日本企業の経営者から発せられた差別的な言葉があった。この本が出版されたのが数年前で、外国人労働者がただのコマとして扱われ、人権がない悲惨な状況が存在した、ということを伝えている。しかし、今でもこのような状況下にいる外国人はまだいるのではないかと思う。

 

文責:榎谷

書籍詳細

著者名:安田浩一

出版年:2010年