読んだ論文:少子高齢化と外国人労働者
外国人労働者の受け入れが必要な背景として、少子高齢化対策や、人手不足、経済のグローバル化に伴う人材獲得競争が挙げられる。 政府は、現在、高度人材の受け入れを積極的に推進しており、単純労働者は、受け入れない方針をとっている。しかし、現状としては、外国人労働者のうち高度人材は少なく、入国を認めていない単純労働者は、多く存在している。需要があるために、バックドアから、外国人の単純労働者が入ってきている。この論文では、受け入れない方針、期間等の制限を付けて受け入れる方針と、技能実習制度等を活用する方針の3つの方向から、単純労働者の受け入れをどうするか述べられている。具体例として、介護、弁護分野で、フィリピンの労働者受け入れについて、この3つの方向から考察している。 次に受け入れた外国人とどのように共生していくかという問題がある。現状あげられる問題点として、医療保障の不備、子供の不就学、不当な雇用管理、差別、外国人犯罪等がある。 外国人労働者を受け入れた場合、日本国民と外国人が共生していくには、以上のような問題を解決する共生政策を充実させ、国民一人一人の意識改革を行う必要性が問われた。
この論文では、今後、日本が単純労働者を受け入れるにしても、受け入れないにしても、新たな日本の改革を起こさなければならないことがわかった。受け入れない場合は、縮小経済、縮小社会への改革また、バックドアから外国人労働者の受け入れを規制する出入国管理や、犯罪対策を行う必要がある。一方で、受け入れる方向で考える場合は、以上に述べたように、外国人との共生政策、日本国民の意識改革を行う必要がある。
論文詳細
著者名:井田 敦彦
出版社:国立国会図書館調査局総合調査資料
掲載年月:2005年
読んだ論文:The “problem” of foreign workers in contemporary Japan
国境を越えた急速な労働力と資本の移動は、現代の資本主義的世界経済の重要な特徴です。日本も例外ではありません。そして、1980年代後半から1990年代初頭にかけて、外国人労働者の流入(gaikokujin rodosha)がおそらく最も議論される社会問題となりました。日本のマスメディアはセンセーショナルな報道でいっぱいでしたが、日本は外国人労働者に対して「開かれている」か「閉じられている」べきかについて激しい議論が激しくなりました。
この見方では、この闘争は、保守的、不寛容、そして同質的とは対照的に、自由主義的、寛容的、そして多様な日本のさまざまなビジョンを超えています。 しかし、私は、日本の新外国人労働者の「問題」には明確な側面があると主張しました。第一に、労働者搾取の問題として。 第二に、人種的イデオロギーの問題として。 保守的な覇権的ビジョンは日本を人種的に同種の国として提示し、戦前の日本の植民地時代の遺産を無視して区別された区別された朝鮮民主主義人民共和国と中国の少数民族を周縁化します。 労働者の搾取、人種的イデオロギー、および少数民族の抑圧を日本の植民地時代の遺産と結びつけることにおいて、新しい外国人労働者の「問題」は現代日本社会における長年のイデオロギー対立を避けている。
論文詳細
著者名:Jouh Lie
掲載年月:2019年7月5日
出版社:Critical Asian Studies
論文誌名:To cite this article: John Lie (1994) The “problem” of foreign workers in contemporary Japan, Bulletin of Concerned Asian Scholars, 26:3, 3-11
読んだ書籍:外国人労働者をどう受け入れるか―「安い労働力」から「戦力」へ
本書は、ワーキングプアについて取材しているNHK取材班が行った外国人労働者の実態についての取材をまとめたものである。
本来、日本ではサービス業や、農業、水産加工業といった産業に外国人労働者を受け入れることが出来ない。
しかし近年、上記の産業では人員不足が深刻な問題となっている。そこで、留学生や技能実習生が実質的な労働力としてそれらの産業に導入されている。そうした、必要な労働力を労働者として受け入れないことから生まれる歪みが広がっていることを本書は明らかにしている。
第一章では、奴隷市場とまで言われるひどい状況で働かされている外国人労働者の実態の検証として、実際に取材班が、外国人労働者の駆け込み寺として機能しているシェルターで行った労働者への取材をまとめている。
取材によれば、怪我をしても治療させてもらえない、時給300円で労働をさせられる、経営者によるセクハラ被害に日常的に遭う、といった現状下に労働者がいることが語られる。
未払いの賃金や、セクハラの賠償など、日本人に対しては当然支払われるものが、彼らには支払われない。まさに使い捨て人材として、技能実習生が使われている。
第二章では、このような現状が生まれた経緯として、かつて当初はアジア諸国に技術伝搬をもたらしていた技能実習制度が徐々にその仕組みが現実にそぐわなくなり、安い労働力を利用するための抜け穴として活用されるようになった歴史等が語られている。
第三章では、外国人労働者たちとの共生のヒントと題して、外国人労働者を救いたいという思いで、多くの外国人を雇用している企業への取材をまとめている。
この企業はバングラデシュ人の元労働者が立ち上げたものであり、全外国人従業員を正社員として雇用している。
従業員には、社会保険加入や健康診断の実施を徹底し、給与水準も高い等、日本人と変わらぬ待遇を実現している。
それだけでなく、楽しい食事の場を用意したり、モスクを設立したり、さらには息子の宿題の相談も日本人社員が見てくれたりする等、極めて良好な関係が会社内で築かれている。
このような理想的な会社になったのは、バングラデシュ人の社長もかつて、労働者として厳しい生活に耐えてきた経験があるからだ。
規模の小さい会社は、監視が行き届きにくいことから、外国人労働者に対する待遇が劣悪になることも珍しくない。
問題が山積みで、暗い現状の存在する今において、このような会社の存在は、一筋の希望の光のように感じられる。
今のように日本が外交人労働者に対して酷い仕打ちを行い続ければ、いずれ日本で働きたいと考える労働者はいなくなり、いずれ労働力不足を解消することが困難になるだろう。
また人権問題の観点から見ても、この現状が続くことは避けなくてはならない。
現状の元となっている労働力の受入れ方について、もっと議論されるべきだろう。
書籍詳細
著者名:NHK取材班
出版年月:2017年8月8日
出版社:NHK出版新書
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